my best friend01
「家もある、お金も長期滞在にならなければ何とかなります。問題は家事です」
ちなみに今晩は出前の寿司だ。しかも特上である。
「俺様が出前寿司を食べるだけでもありがたいと思え」と、寿司ひとつで金持ち根性を見せた跡部に不安を覚えつつ、は人生初の特上寿司に舌鼓を打つ。
(ぅんま!)
「学校に行くとなるとやはりひとりで家事負担はキツイかと思うのですが」
「俺も基本的な事くらいなら出来るで」
が跡部を見、忍足を見。
「それじゃぁ二日交代と言う事で」
「おい」
「大丈夫です」
「大体、出前でいいだろうが」
「いつまで滞在するようになるか分かんないんですよ? 無謀ですって」
「フォローできひんわー」
仏の面になった忍足を一瞥、跡部は「そもそも」と眉間に皺を寄せた。
「何でてめぇと一緒に暮らさなきゃならねぇんだ、忍足」
「そんな事言われてもなぁ、俺も一緒に来てしもうたし」
「大体、てめぇが図々しく部室に居座ってなきゃ今頃ッ」
歯ぎしりが止まらない跡部に、
は慌てて口を挟んだ。
「私は忍足君が居てくれて助かるよ」
フォローで墓穴を掘るのは得意技。
トガンと跡部の地雷が爆発して、険のある瞳がを睨みつける。
「俺様だけじゃ不安だってのか」
「いや、正直私もまさか忍足君が居て助かると思う日が来るとは思いませんでしたけど」
「、お前にとって俺って都合のええ男よなぁ」
「そういう事で、家事は主に私と忍足君が交代で担当。跡部君はごみ捨てと風呂掃除からはじめましょう」
ずずっと茶をひとくち。宙を仰いだ忍足は遠い目をした。
「・・・まぁ世間勉強か」
一生縁のなさそうな跡部は職場体験とでも言うべきかもしれない、とまで考えていたのに、すんなり頷いた跡部に忍足は眼鏡を光らせた。
「なあ、跡部」
「あぁん?」
そうだったこの男、が絡むととたんに扱いやすくなるのだった。
「ここでの経験は結婚生活の練習になるで」
「…」
「は普通な結婚生活をしたがるはずや。跡部が出来る所、見せたろや」
安心しや、俺が教えたる。の一言は忘れない。
「やってやろうじゃねぇか」
やる気の跡部を見て、「忍足君何言ったの」と問うと、忍足はニヤリ笑う。
「なんか怖いけど。…まあ、とにかく当面はこの役割分担で行きましょう」
「ああ」
「後、学校では話しかけないで下さい」
「ああ・・・あぁん!?」
「忍足君もです」
「なんでやねん」
は静かに視線を向けた。
「お二人とも目立たずに学校生活を送れる自信がありますか?」
尋ねている視線じゃない。
「俺は跡部と違って目立とうと思って目立っとるんとちゃう。天才っちゅーのは、自然と人をひきつけてしまうもんなんや」
「寝言は寝て言え」
どうぞよろしくお願いします、とご丁寧に頭まで下げて皿を片付け始めたの背中を見送って、忍足は跡部に首を巡らせた。
「跡部、憧れの学園生活は遠そうやなあ」
「・・・」