ドリーム小説
刀さにです。
1.おいで(青江)
「積んだ」
山のように積まれた書類を傍らに、審神者は生きた屍よろしく机に突っ伏した。
「これ無理だわ。明後日提出とか、マジで無理」
年末も差し迫り、政府から送られてくる書類の量が尋常では無い。毎年の事と覚悟はしていたが、着手するとあまりの無慈悲に泣きたくなってくる。
出陣や遠征、内番などなど。
編成を考えていると実際寝る間もなくて、目は赤いし、肌は死んでいて、してもしても書類は終わらない。
だんだんと鈍くなる脳は時間を追う事に効率が悪くなるばかり。かといって寝てしまえば絶対に終わらない。
固い机の上ですら睡魔に飲まれそうで、うつらうつらと半眼になっている審神者の耳に、障子を叩く音が届いた。
「はーい」
「起きてるかな?」
「あ、おえ!?」
跳び起きた審神者は、薄く開いた障子に向かって声を開ける。
「開けないで!」
「…」
「青江だけは入室禁止って言ったはずだよね、わたし!」
恋刀のにっかり青江だけには、この見るに悲惨で無残な姿を見て欲しくない。
頑張っているねと褒めて欲しい気持ちに泣く泣く蓋をして我慢したと言うのに、今開けられては全てが水の泡だ。
泡を食ったように慌てた審神者は、咄嗟に自分が尻に敷いていた座布団を持ち上げると、顔を隠した。
するりと障子が開く音が聞こえる。
呆気に取られたような間が開いたあと、青江がくすりと笑う声が聞こえた。
「また君は、赤くて四角い、随分と可愛い顔をしているね」
「何の御用でしょうか」
「あまり根を詰めて空回りしてもしょうがないだろう? 少し休んだらどうだい」
「大丈夫、平気」
「と、君が頑なだから僕が引っ張りだされたと言う訳さ。君の顔を立てて、あと二日は奥に居ようと思っていたんだけれど…」
青江が部屋へ入って来る音が聞こえる。
足音から、布団が入っている襖へ向かっていると察した審神者は、座布団を持っていない方の手を伸ばした。
「布団は結構です! 絶対無理だから! 起きれないから!」
無情にも襖が開く。布団の柔らかな音がする。
審神者は座布団の奥でギリギリと歯噛みした。
「青江――! 止めてー!」
「ぼくも力づくは趣味じゃないからね」
のんびりと言う青江。
どれが上布団で、どれが枕を置く音かまで分かる。
仕舞にぽん、と枕を叩く音がして、青江の穏やかな声が聞こえて来た。
「おいで、主」
「嫌ぁァアァアアア! 誘惑しないでェェエエェェエエ!」
「そのまま頑張るより、一度休んだ方が効率がいいんじゃないかい?」
「起きれないと終わりだから! リアルガチでヤバイから!」
「おやおや。ぼくが起こすよ、なんて言う野暮な台詞を御所望かな。言われなくとも、君の隣に居るつもりだよ」
「起こされるのが一番嫌ァアアァ! 絶対死んだように寝る! 寝てる自分に自信が持てない! 隣に居ないでぇええぇ」
無言。
突然降りた沈黙に、審神者はおそるおそると座布団から顔を覗かせた。
僅かに出した右目に、にこにこ笑って座っている青江が映る。
「おいで、主」
「ひぃ!」
「お、い、で」
ぽんぽんと枕が叩かれて、その白くふんわかとした布団に審神者は戦々恐々とした。
「あ、青江さん。マジで止めて下さい」
「へぇ、君は無理やりが好みだったのか。知らなかったな」
「好みじゃないです! 何の話してんだ!」
青江が立つ。近づいて来る青江に、審神者は座布団を構えなおした。
何を言われても座布団は剥がさないよう心に強く決めて、身構える。布団と青江を見たら終わりだ。そう言い聞かせる審神者の耳元で、衣が掠れる音がした。
「おいで、主」
すぐそばで、青江が低く声をあげる。
そのあまりの美声に腰が抜けて、審神者は後ろに倒れかけた。
腰を支えた青江は、その隙にするりと座布団を抜き取ってしまう。
「ぎゃ!」
「おや、座布団の君も可愛かったけれど、下にあるのはまた愛らしい顔だね」
「も、そゆの、いいんで…」
座布団に伸ばした手が空を掴んだ。力なく落ちた腕で、審神者は畳に両手をつくと、頭を垂れる。
「寝ますわ」
*+*+
きっとすごい破壊力。
◇
2.好きだ(鯰尾藤四郎)
なんだか、色々としんどくなる時がある。
昔の引き出しからわざわざ引っ張りだして来てまで自分を責めてみたり、突然何もかも投げ出してしまいたいような衝動に駆られたり。
「そう言う事ない?」
訊くと、鯰尾藤四郎は酒を舐めながらあっけらかんと答えた。
「無いねぇ」
「だよねぇ。……嫌、鯰尾のそう言う所に結構救われてるのも確かなんだけれど」
あるよなぁ、と酒を片手にしみじみ相槌を打って貰いたいなら、鯰尾に訊くべきでは無かった。
過去なんて振り返ってやりませんよと笑い飛ばし、
修行に出て、ああは言いながらもやっぱり気になっていたのだと過去に向き合う合間も、元の主に会って記憶を取り戻してからも、鯰尾は自分の中でキチンと受け止める。
そうして過去は過去だと笑うのだ。
そんな鯰尾の強さに惹かれているのだから、やっぱり頷いて慰めて欲しいと言うのは自分勝手な気がして、
また一つ自分を責める要因が出来てしまった審神者が渋い顔で酒を呑んでいると、鯰尾はそんな彼女を見る瞳を細くした。
「あ、今、話す相手間違ったって思っただろ」
咽る審神者。
背を撫ぜる鯰尾は、口先を尖らせた。
「ひでぇー」
「ごめんって」
「罰としてくすぐり!」
「ちょ、止め…! 鯰尾…!!」
背を撫ぜていた手があっと言う間に脇腹に侵入して来る。
鯰尾の方がよほど細腕に見えるが、どんなに華奢でも相手は刀剣男子。結局四つん這いのまま逃げるしかない審神者は、後ろから追ってくる鯰尾に引っかかってつんのめった。額を畳にぶつける。
蹲って額を押えていると、伸びて来た鯰尾の手があやすように撫ぜて来た。
「そうそう。痛い時は俺に痛いって言ってもらわないと。慰められないだろ」
「…鯰尾、痛い」
「おー、よしよし。痛いの痛いのとんでけー」
「鯰尾……辛い」
「よしよし。……上手くいかない時もあるし、それでも頑張らないとしょうがない時もあるって」
「……」
「どうしても嫌な時はさ、俺と逃げようか」
思いもしない言葉に審神者は顔を上げる。
首を巡らせると、存外真面目な顔をしている鯰尾と目があった。
てっきりいつもの調子で冗談だよ、と笑い飛ばすと思っていた審神者は黒々と目を見開く。瞳に映る鯰尾は、にんまりと笑った。
「二人で現世に逃げよう。俺、免許って取ってみたいんだよなぁ。車買って、旅とかどう?」
「鯰尾が…車運転するの?」
「何だよその顔。結構様になると思うんだけどなぁ。犬とか飼っても楽しそうだと思うし」
「…」
指折り数えた鯰尾は、まるで悪戯を思いついた子どものような顔を向けて来る。
「良いだろー、自由の旅」
自由の旅。
口の中で呟いた審神者は、どういう顔をしていいのか分からないまま、笑った。
「なにそれ、楽しそう」
「でしょう? ギターとかも覚えてみたいんですよね、俺。今まで刀ばっかり握って来たからなあ、上手く弾けるまで、結構時間掛かるかも知れないけれど」
「鯰尾は意外と器用だからね。覚えるのも早いんじゃない?」
「意外とって何だよ」
「言葉の通り」
思わず吹きだす。
頬を膨らませた鯰尾も本気ではないようで、笑う審神者に釣られるようにして破顔した。二人でゲラゲラ声をあげて笑いながら畳を叩く。
ひとしきり笑った鯰尾は、目元の涙を拭いながら瞳を伏せた。
「な? 俺に相談して正解だっただろ?」
「うん」
素直に頷くと、途端に得意気になった鯰尾は鼻の下を掻く。ふふんと笑った。
「恋刀の俺にしか出来ない慰め方って言うのがあるんだよなあ」
「確かに。さすがだね、なまず…」
「好きだよ」
「――!」
「頑張れる気がして来ただろ?」
にやにやと笑う鯰尾に言葉が出なくて、審神者は息を吐くように笑う。真っ直ぐな鯰尾の姿はいつだって強い。そんな姿に見惚れていたら、また立ち上がれるような気がした。
「……ホント、鯰尾には適わないよ」
*+*+*+
頷けないけど、全力で慰めてくれる鯰尾。
タイトルから好きよ好きよ好きよが浮かんだ、安直なわたし。
◆
3.バーカ(堀川国広)
「おい」
報告書に頭を悩ませていると、後ろからぶっきらぼうな声がかかった。首を巡らせると、開けっ放された襖の奥に山姥切。珍しい刀が訊ねて来たものだと口を開くよりも先に、彼は丹精な眉間に皺を寄せた。
「兄弟はどうした」
「ん? 山伏なら、裏山に行ったけど」
「そっちじゃない。堀川だ」
「国広? 国広なら今日の当番は…」
「違う! 何があったんだと聞いてるんだ」
相変わらず噛みあわない。
遅ればせながら、訊かれた意味を悟った審神者は当番表を捲る手を止めた。繕う笑顔が不自然じゃない事を祈る。
「国広がどうかしたの?」
「…」
「……」
沈黙、耳に痛い。
どう返答しようか迷っていると、返答を待たずして踏み出した山姥切は一直線に審神者へと向かって来た。伸びて来た手がジャージの襟首を掴む。
「………来い」
「え、ちょ、実力行使!? いつからそんなアクティブな刀になったの、山姥切!」
「うるさい。どうせアンタが悪いに決まってるんだ。さっさと謝って来い」
「出たよ! 何気に兄弟大好きだもんなぁ! ちょ、分かったから、引っ張らないで! 山姥切の布と違うんだから、首が締ま…ッ」
引き摺られていく。
日々室内で事務作業の審神者は日光に弱い。焼けるような日差しを浴びてぎゃあと悲鳴を上げる。
「やば! 眩しい、灰になる…っ、灰になるから山姥切! 死ぬ――!」
「うるさい」
背中を蹴られた。そりゃあもう雑に蹴り飛ばされてつんのめる。床に額をぶつけて呻いていると、スパンと襖が閉まる音。
どこに放り込まれたか考えるよりも先に、降って来た声に心臓がキュッと狭くなった。
「主さん?」
「…」
審神者は丸まったまま後退を心みる。無理だった。
散々迷った挙句顔を上げると、目があったのは、ビー玉のような堀川の青い瞳。
ちょこんと首を傾いだ彼のいつもと変わらない様子に、内心ほっと息を吐いたのもつかの間、しどろもどろとなった。
「国広、えっと、その」
言葉が出て来ない。
半開きの唇で固まっていると、堀川は腰を下ろした。差し伸べられた手を見て、苦い感情が広がっていく。
(そう、なんだよね。山姥切の言う通り…わたしが悪い)
現世に行った折、たまたま知人に会った。
審神者と堀川を見た彼女は、何も言わないうちに当然の顔で堀川を弟だと考えた。
見た目的にアウトなのは自覚がある。違うの一言が出て来なくて喘いでいる合間に、聡い彼はいつも姉がお世話になってます、と頭を下げたのだ。
驚いて見た、堀川の少し寂しそうな横顔。
「国広、その」
思い出すと心臓が痛くなってごめんと謝りかけたのを、堀川の指先が留めた。
だんだんと堀川の顔が近づいて来る。
ちゅっと触れた唇と唇。
驚いていると、彼は照れたようにも見える、綻ぶような笑顔を浮かべた。
「主さん、馬鹿だなあ」
「ん!?」
「弟って言われて、僕が怒ったと思った? そこで僕が怒ったら、弟みたいだって事、認めたみたいになるよね。
確かに僕も、傷つかなかったかって訊かれたら嘘になるけど。僕よりもずっと、主さんの方が傷ついた顔をしてたから」
「…そんな顔、してた?」
「うん、してた」
頬を引っ張ってみせると、鼻頭を押えられた。止めてくれ、鼻が低くなる。抗議の声を上げると、堀川は笑みを深くする。
「でも僕も、誰にも気づかれてないつもりだったけど…さすがに兄弟と兼さんは誤魔化せないや」
「兼定?」
「兼さんを探しに行かなくて良かったよ。せっかく気をきかせて貰ったのに、主さんとすれ違う所だった」
「気を…利かせて?」
「うん」
にこにこと笑う堀川。
ここに来て、蹴飛ばされて押し込まれたのが、常に洗濯機がフル稼働している小部屋だと言う事に気付いて、審神者は息を詰めた。
「あの、ねぇ、国広!? ちょっと落ち着こうか、その…!」
「ねぇ、主さん?」
「はひっ!?」
「僕は弟に間違われた事よりも、主さんが泣きそうな顔をしてた事の方がずっと辛かった」
堀川の長いまつげが、頬に影を落とす。
ゆっくりと微笑んだ彼は、穏やかな口調で呟いた。
「恋人だって言ってあげられなくて、ごめんね。主さん」
「ッ」
「主さん?」
不覚にも緩んだ涙腺。見られたくなくて俯いた審神者は、国広、と弱弱しい声を上げる。
(ホント馬鹿だ、わたし)
謝るよりも、言わなくちゃいけない言葉があったのに。
「国広、好き」
「うん、僕も」
主さんが大好きだよ。
そう言って、花が咲くように笑った堀川に男らしく抱き込まれて、ついに心臓は止まった。
*+*+*+*+*
堀川くんの馬鹿だなあを想像したら萌えた。
5.待ってろ(鶴丸国永)
「外に出掛けないか。もうすぐはろうぃーんだろう? 洒落た菓子であっと驚かせようぜ」
鬱々を持て余し、部屋で塞ぎこんでいたい気分だったのだが、恋刀の期待に満ちた瞳には勝てなかった。
女審神者はベンチに腰掛けると、溜息を吐く。
「やっぱり来るんじゃなかった…」
(鶴丸が楽しそうなのに救われたかな)
考えて、ぽつりと落とす。
「まあ鶴丸の場合、誰と居ても楽しむんだろうけれど」
我が本丸のびっくり箱、鶴丸は驚きや楽しみを見つける天才である。比べて審神者は腹の中をぐるぐる憂鬱が巡る、がっくり箱か。
「…だらしないわね、ほんと嫌になる」
視線を気にして小さくなる自分が嫌になる。
彼女たちにないものを数える方が早い自分に嫌になる。
やっぱり、
「やっぱりある程度気持ちが浮上するまで、引き籠っておく方が良かったかも」
「それは聞き捨てならないな」
冷たいものが頬に触れて、審神者は反射的に背筋を伸ばした。そろりと振り返ると、ジュースを両手に鶴丸が笑っている。
「俺としては、君のそう言う陰鬱で不貞腐れた顔も好きだったりするんだが。……おっと全部飲んでくれるなよ。半分ずつにしよう」
まただ。
鶴丸がいると、視線が集まる。
そりゃあこれだけ美しい刀を連れているのだからしょうがないのかもしれないが、審神者は胃の辺りを抑えた。
(わたしだって、審神者じゃなければこんな綺麗な人と――)
審神者だから、一緒にいられる。
審神者じゃなければ……選んで貰えそうな所ひとつ、見つけられない。
(苦くて嫌になる)
しかめた顔を掴まれて、審神者は瞬いた。
口を塞がれたかと思うと、生ぬるい液体が流れ込んでくる。思わず飲み込んだ審神者は咽た。
「何コレ、まっずぅぅうう!?」
「驚きだろう? ははっ」
見れば、二缶とも随分奇抜な色をしている。売る方もびっくりだが買う方もびっくりだ。一体どこでこんな不味そうな、もとい不味いジュースを見つけて来たのか、訊ねようとした審神者は金色の瞳に縫いとめられて、言葉を飲む。
「つるま…」
「待ってろ。俺が君を笑わせる」
目頭を擦られて、鶴丸の瞳には間抜けな顔をした審神者が映っていた。
陶器のように白い肌がほんのり朱に染まって、長いまつげが頬に影を落とす。
「だから君のそう言う顔を、独り占めしようとするのは止めてくれ」
どこか不貞腐れているような鶴丸の声に見開いた目が乾く。
「っ」
つんと鼻が痛い。
気がつけばぼろぼろ零れている涙に、審神者は泣きじゃくった。
「な…に、それ!」
「君が引き籠っておけば良かったなんて言うからだ」
「だって、こんな…とりとめもない、嫌な気持ち…っ、出口なんて全然ないんだからっ! 苦くて、不味くて、嫌になる!」
「ほぅ、この飲み物とどっちが不味い?」
「同じくらい」
「それは不味いな、驚きだ!」
からころと笑って抱き寄せられる。
男の体躯とは思えないほど細い身体。それでもしっかり抱き留められて、
「なら俺と半分づつにしよう」
なんて言うものだから、泣いていいものか呆れていいものか分からないまま、たまらず噴き出すようにして笑った。
◆
5.泣くなよ(薬研藤四郎)/Rは15です。
「泣くなよ、大将」
伸びて来た人差し指が涙を拭う。
手袋の、濡れて冷たい感触。耳朶を掠める低い息に、情けなくてたまらなくなる。
「薬研、ホント、大丈夫だから」
泣けると気が緩んだところを訪ねて来られて、どうしたのと尋ねようと思ったら、嗚咽が滑り出た。
引っ込みがつかなくなった上に泣き止むタイミングも逃して、
「明日には元気になるから」
一人にして欲しいと言おうとしたら、先手を打たれる。
「――俺っちには言えない事か?」
「ちが!」
開いた口が塞がらない。
「……違うの。これと言って理由がある訳じゃなくって、心の穴を塞ぎたい、というか。薬研が付き合う義理もないっていうか」
思いつくまま並べていると、ぐいと腹を押される。
倒れ込んで見上げた薬研はついと瞳を細くした。
「確かに俺っちは、心の穴なんてものを埋めてやるほど殊勝な刀でもないしな」
「そうじゃなくて」
黒い手袋を食む。
白い指先がするりと夜闇に浮かんで、そのなまめかしさに息が詰まった。
「やげ」
ひとつ、額に。
ふたつ、右頬に。
みっつ、左頬に。
ついばむように、鼻頭を吸われる。
「薬研、今はそう言う気分じゃ」
ないはずなのに。
とろりと溶けるように笑う薬研に目を奪われる。
「雅を解せない刀を恋刀に置いたのは大将だからなあ」
腫れて中華まんじゅうみたいになっている目に口づけされると、自分がとんでもない顔をしている事を思い出した。
今はそんな気分でもないが、それ以上に顔がヤヴァイ。
腹を撫ぜられる感触にひぃと悲鳴が上がる。くすぐるような吐息に背筋がぞわりと泡だって、
「試に、代わりの穴でも埋めてみるっていうのはどうだ」
「泣き止んだ! 泣き止みましたから! 埋めてみなくて大丈夫!」
「遠慮はいらねぇよ」
耳朶を食まれる感触に
「いっぱい泣けよ、たーいしょ」
眩暈がした。
*+*+*+*+*
pixvに上げていたものを手直し。
ありがとうございましたー。
お題こちらからお借り致しました。
確かに恋だった 様より、一言にときめく5題
1.おいで / 来いよ
2.好きだ
3.バーカ
4.待ってろ
5.泣くなよ